2008年01月06日

この道はつづく

 1月、派手な新年の飾りはほとんど外されていたが、まだ初もうで向けのタペストリーはあちこちに吊り下げられていて、わずかな風に揺れていた。
 今日から、泉水さんは会社に戻ってくる。年末、無事に退院できて、3が日はずっと実家にいたそうで――仕事始めから復活したかったんだけど、事後検診と部屋の掃除で無理でした、というメールを受け取っていた。

 0番ホームのいつものベンチに来た。左端から、すっと光が伸びている。目を細めて、ホームの時計を見たら、まだ8時前だった。泉水さんにメールを打っても、電車に乗っている頃だし、時間もある――カバンを置いて、自販機に向かった。

 そして、いつも通り茶色の缶を選ぼうとしたら――


「ロイヤルミルクティで!」


 まぶしくて、見えなかった。
 泉水さんが、顔がすこしやせてたけど、たしかに白いコート姿の泉水さんが――いた。

「おはよう、向井君、……私も早く目がさめちゃって、あの……」

 僕はホットのロイヤルミルクティを先に選んで、泉水さんに渡した。そして泉水さんがそれを受け取るとき――思わず泉水さんの頭をそっとなでてしまった。泉水さんは猫みたいに頭を引っこめた。きっと、目を丸くしていたと思う。それでも手ははなさなかった。

「この前はごめん。でも、ほんとに……よかった……」

 泉水さんは頭に乗せられていた手を自分でとった。ミルクティの缶の熱さが残っていた。そのままそっと、手のひらを握ってくれた。

「ありがとう」

 朝日に照らされた0番ホームは、ほんとにあの歌でいうような、“あした”の浜辺のようだった。


−終わり−
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