2013年01月27日

想像らせん構造


:                   表情で、動作で、いきづかいで。
:             相手の存在を確かめることに慣れた僕たちは、
:         テキストだけの世界で、めいっぱい頭を回転させても、
:        書き手の肩の「かたち」すら わからなくなってしまった。


<ネット上に「人格」を生む>

 僕は女性です。
 いや、まじで。

 それでも、ホームページやメールマガジンや、あちこちの掲示板で
「僕」と言い、さらに関西風な言い回しをしていれば(女の子らしい
 言葉遣いでなければ)、いざ写真を見た時に、モニタの前でびっくり
 されても無理はない。

  ちなみに、普段でもプライベイトな時は、めったに「ワタシ」なんて
  言わない。俺、僕、おいら−−ふるさとの親が聞いたら卒倒しそうな
  言葉の悪さだ。


 ネットの世界(インターネット・パソコン通信・草の根ネット)では、
 自分を称する文字列「ハンドル」(*)の使い方、そして書き込む文章の
「言葉の使い回し」しだいで、自身の姿をたやすく「ねじ曲げる」
 ことができる。

 全く違う風ぼうに化けることも、逆に普段学校や会社で見せないような
 なにもまとわない「素(す)」をさらけ出すこともできる−−
 相手にシカケのついた眼鏡を渡すように。

 そのギャップをどう扱ってどう楽しむかは、ハンドルの使い手に
 すべてゆだねられている。

「波河さんって、女の人だったんですね」といったメールを、
 今でももらうし、オフで「会うのははじめまして」とあいさつしたら、
「女性だったんですか」と言われることもよくあった。もしかしたら僕も、
 そういう周囲の反応に 痛快感を覚えているのかもしれない。



<トビラは開け放たれたまま>

「インターネット」では、完全に「自分しか見られないように」情報を
 隠ぺい(いんぺい)することは「不可能」である。
 はじめてホームページを作る人、メールを出す人、
 そしてそれらを手ほどきする人(*)は特に、
 この「あたりまえのこと」を知っておいてほしい。

  UNIX 系の コマンドで、「権限」を決める chmod(*)というのがある。
  これは、自分やグループ(同じサーバの人)・他人(世界中の人)に
  対してファイルを「読めるようにするか」「書けるようにするか」
 「実行できるようにするか」を選択できるのだ。

  けれどもこれで自分にしか読み書きできないように設定したと
  しても、(chmod 700 filename...)見ようと思えば「誰でも」
  のぞくことができてしまう。
  サーバの管理者ならば必要があれば(*)ファイルをオープンできるし、
  もしも管理者のパスワードが誰かに暴かれてしまえば、「誰でも」と
  なるわけだ。

 鍵(パスワード)をかければ、と思うかもしれない。
 ただそれは、中を見られるまでの時間を延ばすための手段でしかない。
 100文字以上のパスワードがかかっていたとしても、
 いつかきっと「ばれてしまう」(*)。

 トビラはいつも、開け放たれたまま、なのである。

 ホームページに書いた文章を見に来るのは、期待しているような
 友だちや親戚ばかりではない。ネットサーフィンの果てに、リンクの
 リンクの、そのまたリンクをたどってやって来た人が、ちょっとだけ
 見て二度と来ないこともある。

 個人のホームページで最も多いトピック、
 自己紹介(プロフィール)や日記、趣味の話は、好きなことを好きなだけ
 書けるから、ひとことメモにする人から、何から何までを詳細に記す人
 だっている。

 それらを読む僕らは、気づかないうちに、敷居(しきい)を踏み越えて、
「個人領域」(プライバシー)に出入りしているのだ。



<想像らせん構造>

 ネットの世界は、電子的ファイルだけで構築された想像の世界に
 とても近い。会ったことのある友だちが一人はいるだろうから、
「あの人が書いたメール」というリアリティ(現実感)と存在感が
(ネットの世界を)本物にしている。
「このメールも、ホームページも、機械が勝手に作ったものなんですよ」と
 言われても、まず信じないだろう。

 ネットの世界で仲良くなってきた人と、メールで少し「重い」話を
 交わしたことはないだろうか。顔を会わせては言い出しにくいことが
 どんどんあふれ出たことは? 悩み事でも、怒りの言葉でも。
 ここでは、僕らの思いも気持ちも、知らぬまに簡単にえぐりだす。

 テキストの羅列(られつ)にも感じる、星の数ほどの日記や掲示板、雑文。
 作り手の気持ちがこもったデータが、はりめぐらされたケーブルを
 いつまでも、どこまでもかけめぐる。

 おもしろい文章に出会ったとする。悲しい物語に出会ったとする。
 これらのデータは、どこまで利用しても−−
 アナロジスティック(Analog-istic)な感情とリンクさせて、
 笑ったり泣いたりしてもいいのだろうか?
 ゆくあてのない不思議な気持ちもまた、意識の中をめぐっていると思う。


 さて僕は今回、ひとつわざと嘘をついた。
 探してみるか、そのままにしておくか−−。


−−−−−
(*)の解説

1.ハンドル:
 パソコン通信時代の言葉。自分の存在をネットのなかで決定する呼称。

2.それらを手ほどきする人:
 パソコン教室の講師から、学校の先生まで、教える側に立つ人すべて。
 はじめてホームページを作るときに、誰でも見られることを説明して
 おかないと、住所や電話番号を平気で書く人がいる。さらにそれらが
 メタサーチ(「Google」など)で引っかかるのだ(^^;
 あとは講習機関が終わって更新することがないのであれば、すぐに
 削除してほしい。

3.必要があれば:
 よっぽどのことがない限り管理者がデータを見ることはあり得ない。

4.いつかきっと「ばれてしまう」:
 パスワードを解析するのに1万回試さなければならないとしても、1回に
 1秒かかるのならば167分で解けてしまう−−高性能なコンピュータ、
 つまりあなたが今使っている機械でも十分可能なのだ、1万回試すソフトや
 プログラムを持っていて、その気になれば−−。
タグ:2000
posted by なみかわ at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | D←→A 2nd Edition
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