2013年01月27日

落書き帳における空白率とデジタル・ネットに解放した感動


 小説の設定(プロット)、日記、今日の買い物、落書きやイラスト。
 僕のノートは、一貫したテーマもなく、思いついたことを適当に書きつけている。
 昔の「自由帳」を読み返していると、書き方の違いを感じるようになった。
 まるで虫に食われたかのように、文章が断片的になり、空白が目立っているのだ。
 その「ノートにない部分」は、テキスト形式のデータで保存していたり、
 ホームページに書かれていたりしている。

 作業の環境も変わった。高校時代は、本を作るときにくらいしか、
 ワープロを叩かなかった。(漢字だって思うように出てきてくれなかったのだ!)
 今は、いつもの「落書きメモ帳」が手元になければ、迷わずテキストエディタで
 ちょこちょこと書く。仕事場でなら、自分宛にメールとして送っておいて、
 家に帰ってから印刷して、まさに「*カットアンドペースト」、メモ帳に
 ぺたりとはりつける。
 確かにかなりの文書が電子的(デジタル)に扱われ、保管されるように
 なってきた。僕の物書きの仕事だって、ノートパソコンを持ち歩けばすべて
 テキストファイルになるし、鉛筆を使わなくても*1バイトや2バイトの文字を
 組み合わせれば、情熱を伝えることが可能だ。
 しかし、本当に大事なことは、手で書かなければ覚えられないし、めまぐるしく
 変わる自分の意識を、いちいちハードディスクに書き込ませていては、
 *何G(なんギガ)あっても足りない。外部装置(*ハンディブレーンなど)を
 持つことが普通になり、データを自由に行き来させるようになったとしても、
「僕だけ」の感動はなくならないはずだ。「僕だけ」のおもいで、「僕だけ」が
 流せる涙、「僕だけ」ができること……。

「生きもの」だからできることは、この先も決して消えないから、
 あらゆる「デジタルへの変換」は、完全には進められないだろう。

 今日もたぶん、誰かがパソコンを買って、プロバイダと契約し、
 メールアドレスを獲得している。自分のことや仕事の話を、インターネットで
 作られた「電子の海」を経由して話し始めている。僕はあいかわらず、
「落書きメモ帳」にプロットを書いて、テキストエディタを動かしている。
 デジタルとアナログの交差点に、みんなが今立っている。
 いつかどちらにすべてが流れてしまう、ということでもなく、たくさんの人が
 ここを通りすぎてゆく。

#14/01/1999, 09/01/2000
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初心者のための用語解説:
*カットアンドペースト:
メモ帳やワープロソフト、メールソフトなどで、必要な範囲を選択・
切り取り(カット)し、その部分を別の場所に貼り付け(ペースト)
する作業を指す。ソフトによっては、画像やデータ部分も同様に
編集することができる。

*1バイトや2バイトの文字:
テキストデータの文字。半角文字は1バイト、全角文字は2バイトの
容量を持つ。漢字変換ソフト(ATOKやMS-IMEなど)は、2バイト分の
コードを組み合わせて、ひらがなや漢字を表示させている。

*何Gあっても:
G(ギガ)は容量の単位。フロッピーディスク1枚が約1M(メガ)で、
1Gは1000M。

*ハンディブレーン:
ウェアラブル・パソコンの一種。手に装着したミニパソコンと言った
ところだろうか。SF物語・ゲームでよく見かける。
タグ:1999 2000

おっちゃんadmin(あどみん)、ちっちゃいSE(えすい〜)

 僕は少し前まで、2000年が21世紀最初の年だと思っていた。本当は
 2001年からの100年間を21世紀というのだが。その21世紀まで、
 あと2年を切った。
 幾何学的な建造物(モニュメント)が建ち並び、リニアモーターカーや、
 浮き上がる自動運転車がかけぬける。家の中で、薄っぺらい液晶画面の
 テレビを見たり、画面のボタンをピピピと押して、買い物をする。
 こんな僕らの予感した*Coolな未来は、本当に近づいてきているのだろうか。
 21世紀になって、がらりとひっくり返ったように変わるわけじゃないな、
 とは最近わかってきたのだが。

 ネットの海には、世界中から、いろんな生き方、暮らし方をしている人が
 集まってくる。みんながみんな、*サイバネティックだとか先進技術的と
 いうわけでもない。
 たとえば、あるプロバイダは−−「おじさん」、関西風に言うなら
「おっちゃん」が趣味で運営していて、サーバは自宅の「はなれ」(別室)に
 置いてあるとする。夏の暑い時は、おっちゃんがパンツ一枚でシステムを
 いじっているかもしれないし、冬の寒い時は、ストーブでモチを焼きながら
 ホームページを更新しているかもしれない。プロバイダの連絡電話番号は
 自宅と同じで、奥さんが「あなた電話よ〜」と、子機を持って来るかも
 しれない!

 僕も仕事でパソコンをいじる(操作する)ことが多いが、あこがれの
 システムエンジニアにはほど遠く、頼まれた書類を作ったり、端末の調子を
 見たりといった、みんなの仕事が円滑に進むような手助けをしている。
 こういった*Hip(<Cool)な状況は、けっこう存在するのでは
 ないだろうか。

 しかし、この「Hipな現在」も、幅広く見つめれば、未来へ少しずつ
 進んでいる課程となっている。インターネットを使うことは、最終的に
「正しいか」まではまだ決められないが、確かに便利で未来的だとは
 言えるからだ。
 今日は、仕事でノートパソコンにソフトをインストールしていた。
 表計算ソフトやワープロで、書類を作る仕事も締め切りが近い。
 僕の仕事が、みんなの役に立ってくれたらいいなあ
 −−そんなことを思いながら、僕の一日も、Hipに続いている。

#16/01/1999, 09/03/2000
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初心者のための用語解説:

*Coolな:
かっこいい、という意味。Yahoo(検索ページ運営の大手)で、
サングラスマークがついているホームページをCoolと言っていた。

*サイバネティック:
正確にはCybernetics。計算機(パソコン)などを利用して、
制御されたもの。

*Hip:
poor(かっこわる〜い)<Hip(まあまあじゃん!)<Cool(カッコいい!!)
タグ:1999 2000

ミカン箱になれなかった夢の実行装置

 パソコンで何ができるか?−−初心者の方は、よく僕にそう聞いてくる。
 僕はこう答える。「何でもできる」と。
 僕は中学生の頃、パソコンがあれば、あの「*ドラクエ」を作ることが
 できる、と信じこんでしまっていた。*ファミコンで動く、
 ファミリーベーシックをちょっとだけ触っていたからかもしれない。
 それは少しだけ違っていたようで、道具(ツール)と思えるなら、
 パソコンは強力な「右腕」となって、僕らを助けてくれるのだと、
 使い続けてゆくうちに知った。

 何でもパソコンが「やってくれる」と甘い思いを抱いて、
 *電気街へ行ってしまったら、きっとその時買って来た大きな本体は、
 使い道のはっきりしないまま、ほったらかしにされてしまうだろう。
 *タワー型の本体なんて、ミカン箱よりもたちが悪い。上に本を置いて
 勉強することすらできないから、困ったものだ。

 パソコンを買おう、とあなたが思うなら、まずメモ用紙に
「何をするために」かをはっきり書く。絵を描くため、音楽を創ったり
 聴くため、ホームページを見てメールを書くため……単にばく然と
 欲しいから、という「もやもや」は消してしまった方がいい。
 それからサイフと店の人と相談すれば、「ただの鉄の箱」になってしまう
 こともないだろう。

 買って間もない頃は、いろんなことをパソコンでやりたくなってくるが、
 全部を「任せない」ことが上達への近道だ。僕も昔、何から何まで
 書くものをテキストファイルにしたことがあったけれど、
 ある日考えていることがなかなか打ち出せなくなって、結局ノートを
 買って落書きを再開した。ツールの一つだ、と思ってからは、
 パソコンと楽につきあえるようになった。

 今年の年賀状も、手描きの絵をスキャンして、お絵かきソフトで
 多色刷りの原稿を作り、ワープロソフトで黒だけ印刷、あとは
 *プリントゴッコでぺたぺたと−−と、用途に応じて使い分けた。

 不況不況と言われても、暗い時代だと噂されても、元気良く成功している
 人や企業は、小さな機会(チャンス)を見逃さずに生かす天才なのだ。
 今、急激にインターネットを使う人びとが増えているが、世界につながる
 端末となるパソコンにも、まだまだ無限の可能性がある。
 やってみたいことはないだろうか。ツールさえあれば楽になることは?
 始めたばかりの人も、だいぶ慣れてきた人も、自分らしい使い方で、
 今使っているパソコンをもっと、「夢の実行装置」に近づけてほしい。

#16/01/1999,09/03/2000
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初心者のための用語解説:
*ドラクエ:
ドラゴンクエストの略。ファミコンで発売されたロールプレイング
ゲームで、その感動を経験された方も多いことでしょう。

*ファミコン:
テレビゲーム機械の代名詞ともなった、任天堂が発売した
テレビゲーム機械「ファミリーコンピュータ」の略称。

*ファミリーベーシック:
ファミリーコンピュータで動く、BASIC(プログラム言語の
ひとつで、初心者も理解しやすい)システム。キーボードと
カセットがセットで売られていた。データのバックアップは、
カセットの単三電池か、カセットテープでとる。

*電気街:
電機街ともいう。パソコンや家電製品の店が集まっている地域。
大阪なら日本橋、東京なら秋葉原が有名。

*プリントゴッコ:
家庭用謄写印刷機。たぶん日本で一番普及していると思うので、
代名詞として使わせてもらった。
タグ:1999 2000

走るメールマガジン〜節操のない本屋をわたり歩く〜

「1月9日、*まぐまぐが復活する。」
 この合言葉が通じる、メールマガジン発行者たちは、
 まさにこの日を待ちわびていたのではないだろうか。
 年が明け、何となく胸の中がすっきりして、まるで朝早くに白い息を
 吐きながらランニングをするような気持ちで、サーバが動く日を
 心待ちにした人も、きっといるだろう。

 インターネットには9つの機能(サービス)がある。特に*The Netの
 威力を感じるのは、*WWW(World Wide Web)と電子メールであろう。
 この数年で、The Netは僕らの生活にぴったりとくっつくようになった。

 ホームページは節そうのない本屋のようだ、と僕は思っている。
 いろんなジャンルの本が、世界中に散らかっていて、*ネットサーファーは
 その中を気ままに渡り歩いているのだ。

 電子メールは、僕らから「伝達の手間」を奪った。思ったことはメールで
 投げればすぐに届く。今回のコラムも、種子島とか知人のいる場所に
 行かなくても書けるから、奈良の自宅で書いたテキストファイルを
 メールで送る。それらの返事も、郵便より確実に速い。
「伝達の手間」は、新しいビジネス・チャンスを生み、*SOHOを生み、
 そして既存の『流通』をも新しい形態に脱皮させようとしている。

 ある土曜日、僕はネットの書店で「よく売れている」本を探しに出かけた。
 ところが、自分ではいくら探しても見つからず、店員さんに取ってきて
 もらった。
 レジで、「この本、売れてますか?」と何気に聞いてみると、
「いや、それほどでも」という返答とお釣りが戻ってきた。

 The Netで効果的に宣伝をして、それがヒットすれば、今までのやり方では
 本棚に埋もれてしまいそうな本でも、楽にすくうことができるのでは
 ないだろうか。本と、本が欲しい人との距離を、The Netは奪い取って
 くれるかもしれない。そうなれば、『流通』もいつかは変わらざるを
 得なくなるだろう。

 なけなしの貯金をはたいて作った僕の本だって、うまくいけばどこかの
 出版社が目を付けてくれて、カバーやバーコードがつくのだろうか?
 なんて甘い夢を見ながら、僕はまた夜になれば、「節そうのない本屋」に
 足を運び、自分のメールマガジンを配り歩いて、掲示板に書き込みをして
 楽しむのである。

#16/01/1999, 09/03/2000, 2013一部改稿
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初心者のための用語解説:

*まぐまぐ:
インターネットの本屋さん「まぐまぐ」。1月に株式会社まぐまぐ
となった、メールマガジン発行サービスサイト。
かえって初心者の方が知っている割合が高そう。

*The Net:
欧米ではインターネットのことをこういうそうです。

*WWW:
ネットスケープやインターネットエクスプローラなどの「ブラウザ」
を用いて、ホームページを見ることができること。

*ネットサーファー:
いろいろなホームページを「波乗り」しているかのように見て行く
人たちをさす。

*SOHO:
Small Office Home Officeの略。自宅や小さな事務所で、
パソコンを導入して、業務をこなす。
タグ:1999 2000

すべてが”0と1”になる前に−−インターネット未認識層にfingerせよ−−

 僕が初めて大学のサーバに*ログインして、コマンドでメールを読んだのが
 4年前の春。まだまだ、静かにThe Netがはやり始めた頃で
 −−ネットスケープのバージョンが1だったと言った方が感覚的には
 わかりやすいかもしれない。

 日進月歩の何倍もの速さで、ネットの世界は波打ち続けている。

 *Web絵本を作ることになって、大学の広報部に取材を受けたのが、
 96年の夏。いくつか質問を受けていて、答えられなかったことが
 ひとつあった。
『自分や周囲の人間が、ネットの世界にはまりこんで(依存して)
 抜けられなくなる危機感を持っていたり、万一そうなった時の対応を
 考えているか?』
 僕はその時は苦笑いして、言葉をにごした。

 つい最近に、メールからインターネットをはじめた友人も、ゼミの仲間も、
 今の通信生活が便利だと言う。みんながメールを使うようになれば
 いいのになあ、と目を輝かせて話をしてくれた人もいる。
 僕はうなづきながら、それが完全に「正しい」ことではないんだと、
 自分に言い聞かせる。

 いつか、ほぼ全ての情報は0と1の信号、電子ファイルとなって、
 作成、管理、加工、保存をされるであろう(便利で劣化しないから)。
 しかし、これと「ネットを使えるかどうか」は、別問題なのである。
「君は、能楽の魅力を知っているかい?」と問いかけるのと、「まだ」
 レベルは同じで、決して知らなくてできない人びとに冷たいまなざしを
 向けてはいけない。僕らが最新のハードやソフトを使いこなす前に、
*『インターネット未認識層』をしっかり捉えなくてはならないのだ。

 僕は初めてメールを投げた日から、確実に人生の新しい時代に踏み込んだ
 と思っている。それを肯定でも、否定するでもなく、全員がそうなるとは
 限らないと、ほんの少しでも覚えていてほしいのだ。

 あの時の『質問』に、いつかはっきりと答えようと、僕はネットを使って
 物書きを続けている。もうすぐそれは、未来に希望がある限り、
 きっとかたちになる、と信じている。


 デジタルとアナログの交差点から、5回にわたり、僕が今まで感じたことを
 書いてきた。手書きの原稿をホームページに変えて、みなさんのモニタに
 お届けしたい。

 メールを出そう。外に出かけよう。チャットをしよう。散歩しながら
 いろいろ話そう。*オンライン・ゲームをやろう。テニスをしよう。
 *オフライン・ミーティングで会おう。手紙を書こう。……

#23/01/1999, 09/03/2000
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初心者のための用語解説:

*finger:
UNIXのコマンド名。finger misaki などと入力すれば、misakiと
いう人の情報が得られる。UNIXとは、メールの送受信や、
ホームページのファイルを置いている「サーバ」に積まれているOS
(オペレーション・システム)のひとつ。

*ログイン:
ユーザの名前と、パスワードを記入して、サーバに入ること。

*Web絵本:
ホームページの形で、絵とお話を作ったもの。動画が使えたり、
音を加えることができるのが魅力。あとは通信回線がもっと太く
なれば、手軽に楽しめるようになる。

*『インターネット未認識層』:
僕の造語。インターネットがなんなのか、よくわかっていない人。

*オンライン・ゲーム:
テーブルゲームやロールプレイングゲームなどで、ネットを介して
対戦相手を見つけてプレイするもの。

*オフライン・ミーティング:
普段メーリングリストやチャットなど、ネット(オンライン)でしか
会っていない人たちが、実際に会ってイベントを行うこと。
タグ:1999 2000